2006年 9月
今年の全国高校野球決勝戦は、見た人の誰の心にも強烈な印象を残した感動的なものでした。
見事、早実の優勝で幕を閉じましたが、斉藤佑樹君と田中将大君のピッチャー二人とも、
心・技・体に渡り誰にも負けない強さと、その純粋さに心を打たれた想いがします。
感情を剥き出しにして闘った、田中君が三振した最後に笑顔を浮かべ、
感情をそのハンカチで拭い隠してきた斉藤君が、最後に涙をこぼした。
負けた方が微笑み、勝った方が泣いた。
そのどちらもの気持ちが伝わってくる、対照的な映像でした。
前回にも“人の品格”について触れましたが、少し前のボクシングのチャンピオン戦に判定勝ちした、
K君も確か同じ年頃の若者でした。
人の価値観はそれぞれではありますが、余りにもTPOを弁えない自分だけの世界の傍若無人な言動に
“最近の若者はこんなんか!?”と、特にお年を召された方は日本の将来に対して
絶望的にも近い憂いを持たれた方も多いと思います。
勿論頑張ってる事は事実であり、又其れを見て“かっこいい”と思う若い人がいるのも事実でしょう。
しかしその“日本人としての品格”というのを考えた場合、やはりお寒いものがありました。
その情けない憂いをこの二人、特に言いたいことの想いをすべて心に秘め、
涼やかな表情で淡々と最大の力を発揮する斉藤君に、本来の“日本の正しい青年”の姿を重ね、
晴れ晴れとした爽やかさで、それこそハンカチではないですが、拭ってもらえた気がします。
星野仙一さんがHPで高校野球とプロ野球の違いを述べておられました。
タイガースのスローガンにもなっていた“ネバーサレンダー最後まで諦めない心、
仮令どんな状況にあっても”だと言っていました。
歳を重ねると、その経験値から予測を立ててしまい、
頑張っても無理だと最初からなり、途中からなり、投げてしまいますよね。
其処に何の邪念も疑いもなくただひたすらに頑張るその姿に、見るものが癒されるのでしょう。
暑い夏に“一服の清涼剤”とはよく言いますが、
一服どころか心身共の汚れと澱みと疲れを吹き飛ばしてくれたこの試合と選手たちに、
心からの拍手と、そして感謝を送ります。
日本の若者も、まだまだ“捨てたもんじゃない”ですよね。