2019年 2月
テニスの全豪オープンで、大坂なおみちゃんが全米に続き、グランドスラムを二連覇しました。
それと同時に世界ランキング1位というのも相まって、やれ日本人初だの・アジア人初だのと
大騒ぎしていますが、特別に何も意識していない彼女は、自分の国籍やアイデンティティが
何処にあるかと問われても戸惑った様子で可愛らしくあっけらかんとしています。
恐らく、そんな事関係ない程フラットなんでしょうね。
誰もが勝利を確信したマッチポイントを三つも握って、
“まだ勝ってもいないのに、もう勝ったと思ってしまったの”と振り返る様に、
その隙を突かれて、セットを失う。
そしてトイレットブレイクを取り、ファイナルセットに帰って来た彼女は、
まるで魂が抜けたかの様にも見える、仏像の如き表情で
“エッもう気持ちが折れたの?”と疑う程。
でもそれは彼女の“無の境地”だったのだ。“インナーピース”と彼女は表現した。
“内なる平穏”正しく先月書いた明鏡止水の心だ。
たった21才の彼女がソレを出来たのは父の祖国ハイチを訪ねた時、
ただ水を汲む為だけに何キロも歩く貧しい人々を見て、
“自分は恵まれている。仮令、物事が思い通りに運ばなくとも私は受け入れる”と
謙虚な気持ちになれたからだと言う。
“勝ちたいではなく、仮令負けてもベストを尽くす。
うまく行かなくてもこんなに優秀な選手と勝負が出来ている、
この場所に立てている事に感謝して、私はもっと謙虚にならなきゃ”と切り替えたそうだ。
そして最後の勝利のサーブを決めた彼女は、その場にしゃがみこみ、俯いて静かに泣いた。
“皆んなありがとう”と。
見ていた誰もが胸をうたれた瞬間だったと思います。
彼女はよく“集中と自信、いつも考えてる”と言います。
“コンセントレーションとコンフィデンス”どちらもCon“根”
人としての根っこの部分という事です。
少々こじ付けかもしれませんが、何か物事を成す時に、絶対必要な二つの要素です。
これで心技体が三つ共揃った彼女は、これからも時代を築いて行くのでしょう。
最後に“トロフィーセレモニーでどうして良いか、どう振る舞うのが正しいのか、
分からない自分がショックだった”と
ちょっと悲しそうな顔をする彼女が、とてもいじらしく思えました。